「永遠の化学物質」と呼ばれる有機フッ素化合物(PFAS)。約4700種もあるうち、PFOA、PFOSは人体への危険性が指摘されており、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、PFOAの発がん性を「可能性がある」から2段階引き上げ「ある」に認定、PFOSは「可能性がある」の分類に新たに追加しました。

また、PFOSは2009年に、PFOAは2022年に第一種特定化学物質に指定され、製造及び輸入が禁止されてきました。

第一種特定化学物質とは、難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質のことです。

PFHxSとは

読み方

PFHxSの正式名称は「ペルフルオロヘキサンスルホン酸」です。

しかし、正式名称が長いため、通称「ピーエフヘキサエス」あるいは省略して「ヘキサエス」と呼ばれています。

有機フッ素化合物との関係は?

PFHxSは、有機フッ素化合物(PFAS)の一つです。

近年、有機フッ素化合物(PFAS)による人々への有害性が報告され、世界中でPFASを規制する動きが強まりました。中でも特にPFOAとPFOSの規制が強まる中、それらの代用品として利用されてきたものの一つがPFHxSです。

PFOA、PFOSと同様の性質を持ち、自然環境中では極めて分解されにくく、高い蓄積性を有するなどの特徴があります。

健康への影響

2023年1月に出された環境省の参考資料「PFHxS及びその塩の有害性の概要」によると、動物へのPFHxS投与実験において甲状腺への影響、肝臓への影響、神経伝達系への影響などが観察されたという報告があります。

現在のところ、人体へ与える影響についてはまだ不明な部分が多く、研究結果にも一貫性がありません。

しかし、動物実験では有害性が示されていることから、人体への影響が全くないとも言い切れない状況です。

身近にあるPFHxS

2023年2月に厚生労働省が公開した資料において、PFHxSが含まれている製品が紹介されています。

日常生活で利用している製品にも使用されていることがわかります。特に衣類の撥水材として幅広く使用されてきました。

PFHxSの主な用途

  • 消火剤
  • コーティング剤
  • 金属メッキ
  • 革製品及び室内装飾品
  • 研磨剤及び洗浄剤
  • 電子機器及び半導体の製造
  • はっ水性能またははつ油を与えるための処理をした生地、衣服

参考:厚生労働省「ペルフルオロヘキサンスルホン酸とその塩が使用されている製品で輸入を禁止するものの指定等について」

飲用水への影響は?

2018年度と2019年度に環境省が実施した河川水、地下水等、環境中の化学物質環境実態調査において、全調査地点中の9割以上でPFHxSが検出されました。

また、各地方公共団体等が実施した水質調査においてもPFHxSの検出事例が報告されています。

地点区分PFOS及びPFOAPFHxS
河川78地点37地点
海域7地点1地点
地下水53地点8地点
湧水5地点1地点
143地点47地点

本調査では各都道府県の有機フッ素化合物の排出源となり得る施設周辺等の計143地点において、PFOS及びPFOAは全地点、PFHxSはそのうち各地道府県の1地点を対象に調査を実施。

※排出源となり得る施設としては、泡消火剤を保有・使用する施設、有機フッ素化合物の製造・使用の実績がある施設、廃棄物処理施設、下水道処理施設等が挙げられます。

調査結果

PFOS及びPFOA

調査を実施した143地点のうち、12都府県の21地点において水環境の暫定的な目標値(PFOS及びPFOAの合算値で50ng/L)の超過が確認されました。

なお、暫定的な目標値を超過した地下水・湧水は、いずれも飲用用途の水ではありませんでした。

PFHxS

要調査項目 PFHxS調査を実施した47地点のうち36都道府県の36地点において0.1ng/L(報告下限値)以上の検出を確認し、最大値は28ng/Lでした。

参考:環境省ホームページ「令和2年度有機フッ素化合物全国存在状況把握調査の結果について」

規制について

PHFxSは、PFOA、PFOSと同様の性質を持ち、環境中での難分解性や生物体内への長期的な蓄積性が世界中で問題視されていたことから、2022年6月ストックホルム条約(POPs条約)の付属書A(廃絶)に追加されました。

日本においても、国際的な規制に関する動きを踏まえて令和3年4月1日に『水道水の要検討項目に追加することが適当と考えられる物質』として検討を行い、PFHxSを新たに追加することとなり、有害性に関する科学的知見や水環境中からの存在状況についての集積を図っていきます。

なお、PFOS、PFOAについては、令和2年4月1日に「水質管理目標設定項目」として位置づけられ、暫定目標値は「PFOS及びPFOAの量の和として50 ng/L以下」となっています。

  • PFOS、PFOAはPOPs条約の対象物質に登録されています。
  • PFHxSは2022年6月に開催されたPOPs条約COP10において、附属書A(廃絶)に追加されました。

※ 要検討項目・・・毒性評価が定まらない、浄水中の存在量が不明等により、水質基準及び水質管理目標設定項目のいずれにも分類できない項目であり、情報・知見の収集に努めるもの

※ 暫定目標値・・・ヒトが一生涯毎日2ℓ飲用しても問題ないとされる値

※ ng/L・・・水1リットルあたり10億分の1グラムの物質が溶解していることを表す

※EU(欧州)では、2023年8月8日にPOPs規則(EU) 2019/1021 のAnnex I(禁止物質リスト)に追加され、「25ppb超含有のPFHxSとその塩」および 「1000ppb超含有のPFHxS関連物質」が規制されている(2023年8月28日施行)

PFASへの対策

日本では、2010年から化審法でPFASの輸入や製造などが原則禁止とされました。また、2020年に水道水や地下水の暫定目標値が決められ、全国の水道局等で対応が求められています。

実際に全国各地で高濃度のPFOSやPFOAが検出された事例も発生しており、今後もPFASを規制する動きが強まっていく可能性は高いでしょう。

弊社では第三者機関による有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)の除去性能試験を実施しており、PFOS・PFOAともに検出されず、除去率94%以上であることが証明されました。

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